先日4月14日(土)に、第一回RehaNus嚥下セミナーにて『食事介助によって飲み込みが変わる~先行期(認知期)の評価・ケアのしかた~』というテーマでセミナーを開催させて頂きました。
去年から実施している、看護師とセラピストを繋ぎよりよい病棟ケアを目指すことをコンセンプトとして取り組んでいる『RehaNusセミナー』ですが、今年度一発目は嚥下セミナーで、普段の摂食嚥下に対してどのような関りが必要か、ということをテーマにお話させて頂きました。
そして、このRehaNusセミナーの特徴でもある、看護師とセラピストがともに学びあえる場ということで、実際のリアルな病棟場面での看護師さんからの疑問や課題、一方でセラピストが感じる病棟での関りに関する疑問などを、お互いの職種関係なくぶつけあってもらいました。
中々病棟場面では、お互いに思っていることを伝えにくい部分はあるとは思いますが、ここではそれもオープンなので、皆さん積極的にディスカッションで盛り上がっていました!!
今回はセミナーでお伝えした内容を、簡単にブログという形でお伝えさせて頂きますので、是非当セミナーの取り組みを知っていただき、今後の皆様の看護ケアのヒントにしてもらえればと思います。
セミナー内容
【当日のスケジュール】
以下に、それぞれに対する概要をまとめていきたいと思います。
食事に必要な評価のポイント
病棟場面で実施する食事介助に関して、普段そこに関わる看護師やセラピストがどのような視点をもつ必要があるかを、患者さんの動画を通してディスカッションしました。
食事介助では、実際起こるであろう問題点に対して、何が原因で、その問題点をどうみつけるのかという評価の視点が大切になってきます。
ただ現象だけみて、口からこぼれるといったことや飲み込みができなくて食形態がアップできないといったことを列挙するだけでなく、それに対してどういった関りが必要で、何に注意しながら食事介助を進めていくべきかという課題について考えてみました。
そうなった時に、摂食・嚥下という機能そのものをみることはすごく大事で、そもそも食べれない原因の大半がここの問題に関わってくるのですが、その前に何故食事をすることが大事かという根本的な部分について説明をしていきました。
特に脳卒中などによって嚥下障害を呈すような方は、リハビリなどで体を動かすといった身体機能の向上の前に、それを動かすための動力(エネルギー)そのものが低下してしまっています(いわゆるサルコペニアという状態です)。
そうなれば、いくら高頻度のリハビリを急性期から実施できようが、回復期で密度の高いリハビリ介入が実施されようが、障害を受けた脳そのものの回復への影響は少なくなってしまいます。
また食事が上手くとれないや嚥下に問題がありむせてしまう、美味しく食べれないということは、ヒトが生きる上でのQOL(生活の質)そのものの低下を引き起こし、患者さん自身の動きたいや食べたいといった意欲の低下にも繋がりかねます。
だからこそ、食事をとるということの根本の部分を理解し、何故脳機能の回復には食事が重要なのかという点について、病棟サイドとセラピスト間でも共有することが重要になってくるのです。
そこの意思統一を看護師さんとセラピストで共有することを、まずはディスカッションを通してしていきながら、実際の食事場面の中での機能についても触れていきました。
食事動作について
食事動作をみる際に、まずは食が口の中に入るまでの過程である先行期(認知期)の重要性について考えていきました。
私たちヒトがご飯を食べるという行動を起こすためには、実は一番大事なことが食をどれだけ認識できるかということになります。
実は当たり前のようで、実際のケアではそこまで意識されない部分で、この始まりがあるからこそ、その後起こってくる摂食嚥下動作というものが大きく変化してきます。
例えば、皆様もイメージしてもらいたいのですが、
①目をつぶったまま目の前にカレーがあった場合、どうやって食べますか?
②熱々のコーヒーがあったときにどうやって飲みますか?
2つの行為を実施するときには同じ口にモノを運ぶ動作になりますが、運動のパターン(食べ方や飲み方)や口の状態(開口や形状)、姿勢の変化が起こった思います。
実はこういった食事をする(ここでは口の中で咀嚼し、嚥下するまでの一連の過程として考えると)ための準備が、その後の嚥下機能に大きく関わるという部分を、体験を通して看護師さんたちと共有していきました。
そうすると普段のケアでは感じることができなかった、『あ~こうされると嫌だ』とか、『声かけだけでも全然違う』といった驚きの声が沢山聴けました。
これはRehaNusセミナーで大事にしている部分で、いくら言葉でこれが大事と聞いても、現場で実践できなければただの知識を得たという自己満足になってしまいます。
だからこそ、ケアにおいて実践を多く取り入れていくことで、実はみえてくるケアのコツなんかも新たに発見できてくるのです。
食事介助について
その中で、中々看護の視点としてはみる機会が少ない身体機能に関して、どういった介助が嚥下機能に影響を与えるのか、嚥下をするためのメカニズムにはどういったポジションや筋の活動が必要なのかを、そこも実技提示を通して学んでいきました。
特に今回は、飲み込みに必要な舌骨の機能に焦点をあて、それをどう評価して、どういった介入が必要かを提示しました。
そしてこの舌骨の機能も、直接的な部分ではない姿勢の影響も大きく関与するということを、姿勢を変化させた中での嚥下を行い、体験してもらうことで、看護師さんへのポジショニングの重要性をお伝えしました。
だからこそ、姿勢が細かくみれるセラピストとの協働が必要で、食事前にリハビリでポジショニングをすることのメリットをお伝えすることができたと思います。
病棟の中での生活スタイルに対して、看護師さんとセラピストがどう患者さんが過ごす時間をマネジメントしていくかも、今後はセミナーでお伝えできればと思っています。
またそれだけではなく、プラスαの要素として、その時に脳がどういった働きがあるのかも合わせてイメージすることで、何故そういった問題が生じているかの個別の患者さんの原因追及にも繋がるという部分をお伝えしました。
少しイメージしにくい延髄のCPGの機能や基底核による運動の発動など、今後はこういった部分を脳卒中ケアセミナーでもお伝えしていきたいと思っています。
看護ケアに活かす脳画像の見方①:脳画像をみるためのポイントとは?
効果判定について
最後は効果判定について、実際の患者さんの動画を用いて、どういったケアの仕方が良いのか、皆様ならどういったケアの関りをするかといったことをディスカッションしながら、今回得た知識の復習を行いました。
始めに普段どういったケアをしているかという部分で話をした時とは打って変わって、具体的にどういった関りが必要かの着眼点が出てくることで、その際に実施する食事介助に対するケアの可能性が広がったように感じます。
少しの関りの工夫がでてくることで、嚥下機能には影響がでてきます。
つまり普段の食事(朝・昼・晩)と3回実施される際に、それぞれで病棟で介入できることで、リハビリ時間以外にも、患者さんの脳機能や身体機能を変えることが、看護ケアを通してできるということに繋がります。
つまりケアからキュアという視点ができることで、看護の観点から患者さんの変化が引き出せるということが、今後病棟での関りにおいても重要になってくるという点を強調してお伝えしていきました。
嚥下セミナーのまとめ
普段のケアの中で、何気なく実施している食事介助ですが、看護師さんができるケアの可能性を伝えることで、受講して頂いた皆様には目から鱗の情報が多かったように感じます(正直セラピストでもここまで考えて食事介助している人は少ない印象です)。
今回は主に先行期(認知期)での関りにおいて、どういった食事介助が必要かについてお伝えしました。
その際に、どういった情報入力を行うかという点では、視覚や聴覚などヒトがもつ5感に働きかけることが、摂食嚥下に対する非常に重要なポイントになってきます。
まずはそこから食事介助を変えることで、実際の食事場面でどういった変化があるかをみていってください。
次回は、看護師さんでも関わることが非常に多い口腔ケアにおいて、そのケアの際にどういった視点から介入することがさらに嚥下機能に変化を起こすかを考えながら、そこを目標としてセミナーを実施していきますので、是非ご興味のある方はご参加ください。
日程は6月9日の土曜日です!!
口腔ケアが変化することで、摂食嚥下における口腔準備期、その先の口腔送り込み期に大きな影響を与えます。
是非、実際のケアのコツを学んでいただき、明日からの患者さんのケアの実践に活かしてください。
非公開: 【嚥下セミナー】口腔機能が嚥下を変える!明日らかできる口腔ケアのコツとは?
それでは、失礼いたします。