【嚥下セミナー報告6/9】

先日、6月9日(土)に、第2回RehaNus嚥下セミナーにて『嚥下機能向上に繋がる口腔ケアの評価とケア』というテーマでセミナーを開催させて頂きました。

今回も、RehaNusセミナーの大きな特徴でもある看護師とセラピストがともに学び合える場をコンセプトに、お互いの病棟場面での疑問や悩みをその都度ディスカッションしながら、講義を進めさせて頂きました。

また実技があることで、その場で学んだ知識をどう活かすかを、受講生の皆様自身が体感し、そして具体的に解剖や口腔機能などの必要な部分をお伝えしていくことで、より現場に落とし込んだ内容になったと思います。

実際のセミナーの中では、講義内容に関係したこと以外にも、日々の悩みやリアルな臨床場面での看護師さんや介護士さんからの疑問・課題が沢山でてきて、一方でセラピストが感じる病棟での関わり方や疑問や協力する必要性などお互いに意見をぶつけ合ってもらいました。

嚥下障害の患者様・利用者様を良くする為に、日々思っていることや伝えにくいリアルな疑問などを聞けるので、かなり盛り上がってました!

講師としてこういったディスカッションをみていると、改めて患者さんへ関わる際の多職種連携の重要性を再確認することができます。

当セミナーでは、少人数制のためなんでもわからないことがすぐに講師に聞けるというスタンスとなり、良い意味での白熱した質疑応答の時間になりました。

これはセミナー受講者にしか中々伝わらないので、また興味がある方はこの熱いディスカッションの空気にも是非触れにきてみてくださいね(笑)。

今回も、セミナーでお伝えした内容をすべて伝えることはできませんが、セミナーレポートという形でお伝えさせて頂きます!

少しでも当セミナーの取り組みを知って頂き、日々の看護ケアに行かせて頂ければ幸いです

それではスタートです!

食事場面での評価ポイントについて

臨床現場での病棟内の関わりの中で、実際の食事介助場面で食事動作での気になる現象は、たくさんあると思います。

例えば・・・

食事動作場面での問題

  • 食事に集中できない
  • 口から食物が溢れ落ちてしまう
  • なかなか口を開けてくれない
  • 口の中に食物が残ってしまう
  • 食事拒否がある
  • なかなか噛めずに、時間がかかってしまう
  • 飲み込んでないのに次々と食べ物を入れる
  • よくむせる                             などなど・・・

これらの食事動作の問題点を見た時の様々な現象には、必ずそれを引き起こすであろう原因(問題点)があります!

しかし、それは実際の食事場面での動作として目にみえるものもあれば、それを引き起こしおこしている脳そのものの問題、そして実際の飲み込みに関わるような、目には見えにくい口の中の筋肉や嚥下に関わる中枢神経系の作用が沢山絡み合っています。

それらの問題点をみつけるために、皆様は病棟ケアにおいて食事場面の何に気を付けていますでしょうか?

そして、みられる現象に対して何を考え、どういった介入の中で食事介助に取り組んでいますか?

私自身も食事介助をしていていつも感じるのが、どうすればその方の食事がスムーズできてかつ、安全に行えるかということ。

しかし、みるべき重要なポイントを見れていない結果、何を見たらよいか判断できず、ご飯を食べれた・食べれてないの2つの中での判断しかできないことが多いのではないでしょうか?

まさに、これは嚥下を勉強する前の私の状態でした。

しかし、食事介入について色々な知識を得て、それを実際の食事場面で実践することで、みるみる状態が良くなるケースにも出会えました。

ではどうやって食事場面での問題点を見分ければ良いのかというと、そこに嚥下機能に必要な知識が重要になってくるのです。

そして、実際の食事場面での問題点が何なのかを分ける為には、食事の基礎知識として食事の5期モデルを知っておく必要があります。

食事の5期モデルというのは、食事には大きく5つの段階があり、それぞれの段階において、それぞれみる機能が異なります。

食事の5期モデルとは?

  • 先行期(認知期):食物を見て、硬さ・味・温度・におい・口へ運ぶ量や速さ・噛む力などを認識する時期
  • 準備期(咀嚼期):食物を口に取り込み、咀嚼して食塊を作り舌背中央に配置し飲み込みの準備をする時期
  • 口腔期:食物を咽頭へ送り込む時期
  • 咽頭期:嚥下反射により、食塊を一瞬(約0.5秒程度)で咽頭から食道へ送る時期
  • 食道期:食塊が重力や蠕動運動により胃に運ばれる時期

そして、嚥下機能に繋げる上で難しいのが、各相だけの問題ではなく、すべてが連動しているということになります。

つまり、準備(咀嚼)期に問題が生じれば、そのあとの飲み込み食堂へ送り込むという時期にも影響を及ぼすということです。

今回は、その中でも食事の口腔準備期についての基礎を知ってもらい、食事の現象の中でどの現象が口腔準備期の問題なのか?をメインにお伝えしました。

口腔準備期って何してるの?機能的口腔ケアの評価・実践

皆さんもイメージして頂きたいのですが、自分たちが口腔準備期の問題があった場合どのような現象になると思いますでしょうか?

食事での口腔準備期を理解し、ケアに活かす為にはまず体験することです!!

これは、RehaNusの特徴の一つで、口腔準備期がなぜ重要なのかを受講生に体験してもらいました!

口腔準備期とは、食物を口に取り込み、咀嚼して食塊を作り舌背中央に配置し飲み込みの準備をする時期になります。

もう少し機能について専門的にみていくと、口腔内に取り込まれた食物を歯列で粉砕すると同時に、舌が食物と唾液と混ぜて嚥下に適した物性に調整すると書かれています。

つまり、この口腔準備期中で患者さんの食事場面において、何をみていく必要があるかをしっかり把握することが重要なポイントになります。

口腔準備期で見るポイント

  • 口唇を閉じて(口唇閉鎖)
  • 咀嚼運動で食物を嚥下しやすい形状にする
  • 唾液と混ざって美味しさも感じる(味覚・唾液分泌)

この3つの点をしっかり見ていく必要があります。

皆様は病棟ケアでの食事場面や食事介助場面でこんな事を経験したことはありませんか?

  • 口から食物が溢れ落ちてしまう
  • 食事形態がだんだん落ちてきて、ムセも多くなっている
  • 噛む力がなく、柔らかいものしか食べれなくなってきている
  • 口の中に食物が残ってしまう
  • なかなか飲み込めず、時間がかかってしまう

このような、臨床での現象の原因は口腔準備期にある事が多いです。

これらの口腔準備期での口唇閉鎖や咀嚼運動には、表情筋・咀嚼筋・舌筋などの筋肉の活動が重要な時期になってきます!

日頃行っている口腔ケアで筋肉への評価・介入ができると、嚥下機能面向上につながるため、セミナー内ではそこにどのように介入していくかを実技を交えて実施しました。

ここでは、普段口腔ケアに慣れている看護師さんからも、「そうやってケアすると嚥下につながるんですね~」というような新たな発見や、介入の際の注意点などが知れて”なるほど”と納得される場面が多くありました。

また皆さんでそれぞれ体験することで、より細かなフィードバックが得れます。

そして、実際にこういったことを実技を通して経験しないと、中々実践では上手く使えないと思います。

参加された看護師さんからは、後日こんな変化があったとリアルな病棟ケア場面での違いも報告頂きました。

口腔ケアを実践してみる

では、実際に口腔ケアにおいてはどういったことに注意しながら介入していく必要があるのでしょうか。

口腔ケアといっても、ただ単に口腔内に残渣物がないか、歯磨き等ができているかをチェックするだけではありません。

口腔内の状態を正しく把握・理解することが、実は二次的障害としてみられるような肺炎といった症状の予防にも大きく繋がります。

そういった口腔ケアにおいて大事な部分としては、大きく分けて2つの要素で成り立っています。

口腔ケアに大事な2つの要素
  • 口腔内の歯や粘膜、舌などの汚れを取り除く器質的口腔ケア
  • 口腔機能の維持・回復を目的とした機能的口腔ケア

今回は、機能的口腔ケアの中で口腔準備期に必要は筋肉に対して、スポンジブラシ・徒手的にどうリラクゼーションや運動を促すのかについて実施しました。

その際に口腔内の解剖の知識を押さえながら、その解剖的な知識からどの部位をどんな刺激でケアするのかなどを実技を通してお伝えしました。

受講生の方々からは、実際に口が閉じやすくなったとか、なんだか顔の筋肉が柔らかくなった気がするといった、口唇閉鎖の変化や表情の変化を実感してもらえたと思います。

そして、そういった体験を通して病棟場面での口腔準備期に向けたケアの可能性も感じてもらえたかと思います。

嚥下セミナーまとめ

今回は、主に嚥下機能の中での5期モデルとしての口腔準備期の基礎と口腔ケアについてお話しさせてもらいました。

摂食嚥下障害に苦しむ高齢者の患者様では、病棟生活でいかにケアするかがとても重要になってきます。

口腔準備期での重要な筋肉の活動(表情筋や咀嚼筋、舌筋)は、食事場面だけでなく、会話・コニュニケーションなどでも活動することがわかってきています。

そのため、いかに病棟生活での活動性や病棟での環境設定・職員全体での関わり、そして今回の口腔ケアや表情筋・舌などの自主トレーニングなどの頻度が増やせるかが機能向上の鍵になってきます。

そういった意味でも、食事における5期モデルの理解と、それに応じた個別のアプローチがとても重要になってくるのです。

RehaNus嚥下セミナーでは、看護師とリハビリがともに意見交換や体験・実技などを通して一緒に学ぶことによって、より病棟連携や他職種連携を実際にどのように行っていくべきなのかを発見する場になります。

リアルな現場の悩みなども情報交換できるので是非一度興味がある方はお越しくださいね!!

次回は、8月5日(日)に今回の口腔ケアに関する知識の理解・技術の提供・復習だけでなく、次の口腔期に如何に促せるかということで舌機能についても触れていきたいと思います。

是非ご参加お待ちしております。

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